自閉症スペクトラムにおける、コミュニケーション障害については他者感情の理解が1つのポイントになるといわれています。
他者感情の理解とは、「こんなことを言ったら相手が嫌がるかな?」などと、相手の気持ちを推測できる力のことです。
これは社会的な交流を行う場面で影響を与えるといわれています。
有名な研究の中に「サリーとアン課題」というものがあります。
なぜ、自閉症スペクトラムのお子さんが、相手の気持ちを理解することが苦手なのか?についてを考えた研究です。
相手の気持ちを考えることが苦手な方や、自閉症スペクトラムのお子さんの気持ちの考え方について、気になっているという方は参考にしてみて下さい。
今回は、この基礎心理+αの研究について概説します。
自閉症スペクトラムにおける他者感情の理解
自閉症スペクトラムにおける、他者感情の理解とは、相手の心を考えて「相手の気持ちを理解する能力」のことを指しています。
バロン・コーエンが行った『サリーとアン課題』などが、発達心理学などで習うことが多いです。
こう言われたら怒るかな?こう言われたら嫌がるかな?こう言ったら失礼だよな?どんな気持ちで考えているのかな?
など、相手の気持ちを汲んであげることが、自閉症のお子さんは苦手なんです。
自閉症スペクトラムにおける心の理論「サリーとアン課題」
【サリーとアン課題の内容】
①サリーはボールをバスケットの中に入れ、部屋を出ます。
②サリーが部屋にいない間に、アンはボールをバスケットから箱に移しました。
③サリーは部屋に戻ってきました。
④サリーはボールを出そうと、まずどこを探すでしょうか??
このような課題です。ここで、解答が2パターンに分かれます。
A:バスケットを探す
他者感情が理解できている場合は、バスケットの中と答えます。
B:箱を探す
他者感情が理解できていない場合は、箱の中と答えます。
「部屋から出て行った」という行動がポイントになります。サリーはアンにボールを移された場所を見ていません。
サリーの気持ちを中心に考えると、自分で入れた元の場所を探すと答えますよね?
こういった相手の考えや想像することが苦手になることが多いんです。
【課題の正答率】3~5歳で検討した結果…
- 健常群+ダウン症群:約80%
- 自閉症スペクトラム:約20%
スマーティ課題
【スマーティ課題の内容】
①前もって被験者から見えない場所で、お菓子の箱(チョコ)の中に鉛筆を入れる。
②お菓子の箱を被験者に見せ、何が入っているか質問します。
③お菓子の箱を開けてみると、中には鉛筆が入っています。
④お菓子の箱を閉じます。
⑤被験者に「この箱を○○さん(ここにいない人)に見せたら、何が入っていると言うと思う?」と質問します。
という課題内容です。ここで、解答が2パターンに分かれます。
A:お菓子(チョコ)
他者心理が理解できている場合は、元のお菓子(チョコ)と答えます。
B:鉛筆
他者心理が理解できていない場合は、鉛筆と答えます。
我々が、アイスの箱の中にはアイスがあると思いますよね?
パッケージからして、当然の考えですよね?
中身を見ないで、外見で判断すれば当然そう答えるかと思います。
ただ、ここではわざと間違えてもらうように、検査者が仕向けています。
結果的に、自分が間違え、中身が分からない人は同じようにみんなが間違える。
と判断できればよいはずですよね。
ここでも、自分を中心に考えるか。
相手を中心に考えるかで答える結果は変わってきますね。
【課題の正答率】
- 自閉症群:約17%
- 言語障害児群:約90%
自閉症スペクトラムにおける心の理論・発育について
4~7歳になると、ある程度正答できる場合が多くなるといわれており、それ以前の年齢だと、誤る子も多いといわれています。
以降の研究などから、ことばの理解が低下している場合でも、スマーティ課題は正答率の差が生じており、自閉症において「心の理論」の獲得が特異的に低下していると考えられるようになりました。
他者感情の理解などは、おおよそ4歳前後に獲得されていくものだと考えられています。
幼児期にこれらの獲得が飛躍的にされていくことは知られています。
ただ、細かい獲得年齢の議論結果はまだ明確になっていません。
沢山の経験や体験をし、心の発達がより豊かになるように子供にはいろいろな経験をしていってもらいたいですね!!
以上になります。簡単ではありますが、心の理論についてまとめてみました。
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